リウマチコラム

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Vol.14バイオシミラーへの正しい理解 東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター 教授 山中 寿 先生

「バイオシミラー」とは、バイオ医薬品の後続薬のことをいいます。後続品・後発医薬品というのは、新薬の特許が切れたあとに、別の会社で製造販売される医薬品のことです。バイオ医薬品以外の後発品はジェネリック医薬品といいます。
ただし、ジェネリック医薬品ほどバイオシミラーについてご存じない方が多いようです。先行品よりも価格が安く抑えられていますが、その効果と安全性は先行品と変わらないのか? 患者さんにとってどのようなメリットがあるのか? など疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。そこで東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター教授の山中 寿先生に、バイオシミラーの特徴についてお話を伺いました。

ジェネリックは「同じ成分、たぶん同じ効き目」
バイオシミラーは「ほとんど同じ成分、同じ効き目」

新薬の特許期間は原則として申請から20年とされており、そのあとは同じ有効成分を配合したお薬を別の会社が製造販売することができます。特許を取って先につくられたお薬を先行医薬品、特許期間満了後に別の製薬会社が製造販売したお薬を後続医薬品といいます。
ジェネリック医薬品は日本でも徐々に普及してきており、鎮痛薬や抗菌薬などを病院で処方され、実際に服用したことがあるという方も多くいらっしゃるでしょう。一方、バイオ医薬品の後続品である「バイオシミラー」は、まだそれほど知られていません。

バイオシミラーの「シミラー(similar)」には、「類似した」「同様の」という意味があります。

ジェネリック医薬品とバイオシミラーの大きな違いは、バイオシミラーは後発品であっても有効性と安全性に影響するような先行品との差異のないことが臨床試験(治験)によって確かめられているところです。

バイオ後続品の特徴

参考:「バイオ医薬品ってどんなもの?」くすりの適正使用協議会



一般的な医薬品の後発品であるジェネリック医薬品は、臨床試験によって確かめられている訳ではないのですが、先行品と有効成分の化学構造が同じだから、「同じ成分、同じ効き目」と考えられています。正確にいえば「同じ成分、たぶん同じ効き目」のお薬ということになります。

一方、バイオ医薬品は製造の際に細胞を利用するので分子サイズが大きく、同じようにつくってもほんの少し違ってしまうのです。(下図参照)
これは、バイオテクノロジーによってつくられるバイオ医薬品の特徴のようなもので、先行品でも同じことがいえます。

分子量(大きさ)のイメージ

参考:「バイオ医薬品ってどんなもの?」くすりの適正使用協議会


このことはお酒に例えるとわかりやすいかもしれません。同じ年に同じ場所で収穫されたブドウを使い、同じように醸造しても個々の樽によってできるワインにはわずかな違いがあるというのと同じです。しかしながら、ワインの味や香りにはなんの変わりもありません。
このような製造上の特徴があるため、バイオ医薬品は必ず臨床試験を行い、「ほとんど同じ成分、同じ効き目」であることを証明してから販売されるというわけです。

価格は先行品の約70%。患者さんの経済的負担が軽減

バイオシミラーのメリットは、先行品にくらべ安価なことです。バイオ医薬品は高価なので、なかには長期間使い続けることが難しくなってしまう方もいらっしゃいます。バイオ医薬品の登場で、以前よりも関節リウマチは寛解を目指せる病気になりましたが、経済的負担という問題が残ってしまったのです。
しかし、先行品の原則70%に価格が抑えられたバイオシミラーが登場したことで、患者さんの経済的負担の軽減が可能になりました。患者さんの中には、バイオシミラーにも抵抗を感じる方がいるかもしれません。しかし、先に述べたようにバイオシミラーは有効性と安全性が臨床試験によってきちんと証明されているお薬なのです。

バイオシミラーも、特許の有効期間が終わったバイオ医薬品(選考バイオ医薬品)よりも安く使うことができます

厚生労働省主催市民公開講座

「バイオ医薬品とバイオシミラーを正しく理解していただくために」より


また、バイオシミラーはアレルギーが出やすいのでは? と心配する方もいますが、そのようなデータはありません。
先行品からバイオシミラーに変更すると、お薬の負担額は3分の2程度に減ります。例えば、1カ月のお薬代が3万円かかっていたならば、バイオシミラーに切り替えることで約2万円になりますので、治療を続けるのがいくぶん楽になるでしょう。バイオシミラーを選択することで負担額が減りますから、バイオ医薬品による治療を決心される患者さんも実際にいます。
関節リウマチの患者さんは女性が多く、家計の負担を考えて治療費を抑えたいと考える方も少なくありませんが、有効な治療を継続することが、寛解という目標を達成することにつながります。そのためにもバイオシミラーは大きな力になると私は考えています。

バイオシミラーについて正しい知識を持つことが大切
東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター教授 山中 寿先生

「正しい知識を持つには、
情報の見極めも必要です」

私が皆さんにいちばんお伝えしたいのは、ご自分の病気について、治療について、そしてバイオシミラーについても正しい知識を持ってほしいということです。インターネットやSNSで得た根拠のない情報で無用な心配をされる患者さんをときどき見ることがあり、インターネットなどは便利な反面危ないなとも感じています。
いろいろな情報を幅広く集めるのはよいことですが、その情報を誰が発信しているのかを確かめることが大切です。病院や医学系の学会などが開設しているホームページは信頼性が高いと考えられますが、個人のブログや出処のわからない情報で、これはどうだろう? と疑問に思うものについては、主治医や看護師に確認するようにしましょう。耳に心地よい情報ばかり得ることは危険です。

バイオシミラーの普及は国民皆保険の維持にも役立つ

欧米ではバイオシミラーを使用する患者さんが増えています。一方、日本では、バイオシミラーを知らない方もまだ多いようです。それについては私たち医療者の責任も重く、できるだけわかりやすく、より多くの人に向けて情報を発信することが努めだと考えています。

価格を抑えたバイオシミラーは、患者さんの経済的負担を軽減するだけではなく膨らみ続ける国の医療費も減らし、国民1人ひとりの税金や保険料負担の軽減にも役立ちます。それは、必要なときに必要な医療を誰もが安心して受けられる、現在の国民皆保険を維持するために不可欠のことです。

バイオシミラーを使用中の方も、使用を検討している方も、またそうでない方も、バイオシミラーというお薬の現在と未来について、関心を持っていただけることを願っています。

2019年3月更新

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