公開:2015年2月

更新:2023年7月

リウマチと共に
生きる

日常生活におけるケアや
各種支援制度などについて解
説します。

公開:2015年2月

更新:2023年7月

日常のケア

関節リウマチの治療は、「基礎療法」「薬物療法」「手術療法」「リハビリテーション療法」の4つで成り立っています。

そのうち基礎療法とは、患者さん自身が病気や治療法について理解し、早期から日常生活のケアを行うことです。

関節リウマチの改善にむけては、薬や手術だけではなく、患者さん自身が治療に積極的に取り組み、医師をはじめとする医療者と力を合わせて治していこうという気持ちをもつことがとても大切です。基礎療法を行うことは、薬やリハビリ、手術の効果を十分に引き出すことにもつながります。

症状の改善を目指す日常生活のケア

関節リウマチの症状は、よくなったかと思うと、また少しわるくなったりと変化することがあります。そうした変化には、心身のストレスや日常の生活習慣、関節への負担なども影響を及ぼしています。つまり、ストレスを避け、生活習慣や関節に負担をかけない動作を身につけるなど、「日常生活のケア」を行うことによって、症状の改善を促すことができるのです。

ストレスをためない

ストレスは万病のもとですが、ストレスは、関節リウマチの症状にもよくありません。できるだけストレスを感じずに生活できれば理想的です。

発熱や頭痛、胃痛など関節リウマチ以外の病気の症状や疲労の蓄積によっても、身体はストレスを感じます。身体的なストレスをため込まないためには、日ごろから体調を整えることを心がけましょう。

◆規則正しい生活を心がける

◆適度に休養をとり、無理をしない

◆風邪などの感染症を予防する
帰宅後の手洗いとうがいを習慣にし、風邪やインフルエンザが流行している時期は人ごみを避けるなど、感染症の予防が大切です。もし感染症にかかったら、早めに受診しましょう。

一方、精神的なストレスにはできるだけ穏やかな気持ちで過ごすようにしましょう。そのためには、いろんな情報に左右されて不安を感じすぎないようにすることや、悩みをためこみすぎないことが大切です。

◆病気についての正しい情報を集め、正しく理解する
今受けている治療、もしくはこれから受ける治療が、自分にとってなぜ必要なのか、理由がわかれば治療への意欲もわいてきます。また、病気や治療法を理解すると、必要以上に不安を感じなくてすむようになります。

◆「できること」に目を向ける
痛みなどの症状があると、「○○ができなくなった……」と落ち込みがちですが、あなたにはまだできることがたくさんあるはずです。「できること」に目を向け、機能を保つための治療やケアに取り組みましょう。

◆悩みを率直に話せる場をつくる
リウマチの患者さんの多くが「病気を理解してもらえない」と悩んでいます。同じ病気をもつ人と悩みを分かち合う場として、「日本リウマチ友の会」のような患者会に参加してみてはいかがでしょうか。仲間から、悩みを解決するためのヒントがもらえるかもしれません。ただし、お住まいの地域によっては、患者会などの参加が難しいことがあるかもしれません。その場合、同じ病気の方が公表しているブログなどを読むことで「悩んでいるのは自分だけではない」と実感できることがあります。

公益社団法人

日本リウマチ友の会
https://www.nrat.or.jp/

◆心を解放する時間をつくる
笑うことで、関節リウマチを悪化させるサイトカインという物質が減少することが、研究で明らかになっています。自然と笑顔になれる楽しい時間をつくりましょう。また、意外かもしれませんが、涙を流すこともサイトカインを減らす効果があります。悲しいときには我慢しないで、泣くことで感情を解放してあげましょう。

適度な安静と運動をバランスよく

関節リウマチの症状は主に関節にあらわれますが、実際には全身が消耗する病気です。疲労が蓄積すると症状が悪化することがあります。全身の安静のためには頑張りすぎないようにしましょう。

◆十分な睡眠時間を確保する
睡眠不足は症状を悪化させる要因です。夜更かしを避け、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。

◆こまめに休息をとる
主婦の方なら、午前中の家事のあとや夕食の支度の前などに、横になる時間をつくりましょう。働いている方は、可能なら昼休みに15分程度の仮眠(昼寝)をとり、帰宅後にも少し横になるなど、生活スタイルに合わせて休息をとり、疲れをためない工夫をしましょう。

◆体がだるいときや、関節の痛みが強いときは無理をしない

一方で、運動をしないと関節の可動域が狭まったり、全身の筋力を保つことが難しくなったりします。関節の可動域や全身の筋力を保つために適切な運動を行いましょう。

◆リウマチ体操を行う

関節の可動域を保つためには、リウマチ体操が有効です。痛みのあるときは無理をせず、痛みが治まる時間帯に行うとよいでしょう。

◆水中ウォーキングなど、関節への負担が軽い全身運動を行う

安静にしすぎると、筋力が衰えるばかりでなく、関節の機能が低下したり、骨粗鬆症のリスクが高まったりします。医師や理学療法士(PT)、作業療法士(OT)のアドバイスを得ながら、全身運動も取り入れましょう。

関節にやさしい環境づくり

関節への負担を減らすことで、痛みを軽くしたり、変形を防いだりすることができます。日常生活において関節に負担をかけない動作を身につけるようにしましょう。関節の負担を軽くするためには住環境、生活スタイルも整えるようにします。和式の生活スタイルよりも洋式のほうが、関節には負担がかかりません。

【住環境編】
◆玄関や階段など、段差の大きい場所には手すりを取り付ける

◆トイレも洋式

手すりを取り付けると立ったり座ったりが安全で楽になります。また、補高用便座シートを利用することでも動作が楽になるでしょう。

◆安全で利用しやすい浴室

手すりを取り付けると浴槽への出入りの負担が減り安全です。転倒防止のために足元に滑り止めマットを敷くとよいでしょう。また、介護用のシャワーチェアなどを利用することで、入浴に関わる負荷が軽減されます。

◆安全で利用しやすい浴室

蛇口をレバーハンドルにすることで、手指、手首の関節への負担軽減になります。ガス栓は、「ひねり器具」を取り付けることで使いやすくなります。調理中の移動を少なくするために、食器や鍋の収納は手の届く範囲に収納しておくと便利です。ゆっくり作業ができるように椅子を設置しておくとよいでしょう。また、自動食洗器、フードプロセッサーなどの便利な器具を利用することで、台所仕事の負担を軽減することができます。

◆ドアノブの改修

従来の丸型のノブからレバーハンドルへ取り替えることで、ドアの開け閉めの動作が簡便になります。また、改修が難しい場合は、「グリップバンド」を取り付けることで、レバーハンドルのように使うこともできます。

【生活スタイル編】
◆寝るときの姿勢

枕は小さく低いもののほうが、首の骨に負担がかかりません。関節が自然に伸びる仰向けの姿勢で寝るとよいでしょう。

◆椅子に座るとき

深く腰かけ、背筋を自然に伸ばします。椅子の高さは、座ったときにはひざが90度に曲がる高さが理想です。座ったときに座面が沈み込みすぎない椅子を選びましょう。

◆ものを持つとき

ある程度の重さのあるものを持つときは、片手ではなく両手で持つようにしましょう。

◆外出するときの手荷物

リュックサックやキャスター付きのカートなどを利用して、1か所の関節に負担が集中しないようにしましょう。

◆スーパーマーケットなどで買い物するとき

買い物カートを利用しましょう。

◆拭き掃除をするとき

関節を曲げたりひねったりしない動作を心がけます。

◆拭き掃除をするとき

蛇口などにタオルをかけ、反対側を両手で持ってしぼります。

◆関節を長時間使う作業は避ける

パソコンのマウスを長時間持っていたり、根を詰めて編み物をするなど、楽しい時間ではあっても関節のためには、休憩をしたり、気をつけてください。

◆長時間同じ姿勢で過ごすのは避ける

列車や飛行機に長時間乗るときは、途中で何度か立ち上がるなどして、関節をゆっくり動かすようにしましょう。車で移動するときは、こまめに休憩をとりましょう。駅などの公共施設では、エレベータやエスカレータをなるべく利用するようにしましょう。

◆補助具を活用する

ただし、便利だからと自助具に頼りすぎないこと。できる範囲はできるだけ自分の力で行う気持ちをもつことがとても大切です。

バランスのよい食事を心がける

関節リウマチになると、運動不足や炎症のために筋肉の量が減りやすくなります。また、合併症である骨粗鬆症や貧血などを発症するリスクも高くなります。栄養バランスのよい食事をとることで、筋肉の量の減少や骨粗鬆症などの予防が図れます。

◆筋肉の維持には良質なたんぱく質を

筋肉の量を減らさない、あるいは筋肉の量を増やすには良質なたんぱく質を十分にとりましょう。
たんぱく質を多く含む食品:肉や魚、卵、乳製品、大豆製品など

◆カルシウム、ビタミンD・Kで骨粗鬆症予防

関節リウマチの合併症である骨粗鬆症を防ぐにはカルシウムやビタミンD、ビタミンKを積極的にとりましょう。カルシウムは骨をつくる材料となり、ビタミンDは腸からのカルシウムの吸収を促進します。体内でのビタミンDの産生を促すためには、食事だけではなく日光浴も大切です。そして、ビタミンKは骨からのカルシウム流出を抑えます。
カルシウムを多く含む食品:乳製品、小魚、緑黄色野菜、海草類、ゴマなど

ビタミンDを多く含む食品:豚レバー、アンコウの肝、サケ、マグロのトロ、天日干しの乾物など

ビタミンKを多く含む食品:納豆、アシタバ、豆苗、カブの葉など

◆鉄分で貧血防止

関節リウマチの合併症である貧血を防ぐには鉄分を多く含む食品を積極的にとりましょう。動物性たんぱく質やビタミンCと一緒にとることで、鉄分の吸収が促されます。
・鉄分を多く含む食品:動物性食品ではレバー、丸干し、キハダマグロ、カツオ、アサリなど。植物性食品ではヒジキ、切干大根、ホウレン草、ゴマなど

◆そのほかに……

痛みやだるさのために、食事をつくるのが困難なときは、無理をせずレトルト食品や冷凍食品を利用しましょう。これらを備えておくと安心です。

体重コントロールは、関節への負担を少なくするためにも大切なことです。栄養バランスとエネルギー総量(食事全体のカロリー)を考慮した献立を心がけ、毎日の体重測定を習慣にしましょう。

冷えや湿気から身を守る

関節リウマチの痛みは、冷えや湿度の影響で悪化することがありますので、日頃から注意しましょう。

◆関節を温める

入浴では、夏場でもシャワーではなく浴槽でよく温まるようにしましょう。さらに、手浴や足浴など部分浴を取り入れることも考えられます。

◆関節を冷やさないための注意

関節を冷やさないためには、保温性の高い素材の衣類を活用します。夏場でも首や手首、足元の保温には気を配りましょう。夏はクーラーの設定温度に注意し、ひざ掛けやストールなどを用意しておきましょう。冬は床暖房やホットカーペットを利用し、足元の冷えを防ぎ、トイレにも暖房機を置いたり、暖房便座を利用します。

◆湿気から身を守るには除湿器や扇風機を活用しましょう

湿気の多い場所も関節リウマチにはよい環境とはいえません。湿度の高い時期は除湿器を使ったり、扇風機などで部屋の空気を循環させましょう。湿度を下げるには、部屋の空気を循環させることが効果的です。

◆温めてよいとき・温めてはいけないとき

炎症が鎮まっているときは、温めると血行がよくなり、痛みが軽減します。反対に炎症が強く、関節に腫れや熱があるときは、冷やすことによって症状が改善します。温めてはいけないときの症状の特徴を、医師や理学療法士、作業療法士などに確認しておきましょう。

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