リウマチコラム

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関節リウマチという病気は、病名はもちろん知っているけど、具体的にはどのような病気かわからないという人は少なくありません。珍しい病気ではなく、決して軽い病気でもありません。しかし、確実な治療の進歩で、病気になってもこれまで通りの生活が送れる方が増えてきました。そのためには、患者さんが治療に対する前向きな意識をもつことが大切だと東京女子医科大学附属病院膠原病リウマチ痛風センター・所長の山中寿先生はおっしゃいます。リウマチら・ら・ら第1回目のコラムでは、山中先生に現在のリウマチ治療について、おうかがいします。

病気に直接働きかける薬で関節リウマチの進行を抑え込む

私が医師になった35年ほど前、関節リウマチの治療は、患者さんの痛みを取ることがせいいっぱいでした。病気が進行して関節が破壊されてしまったら、あとは手術で関節の機能を何とか回復させるほかありませんでした。そのため、日常生活を自立して送れなくなる方も、残念なことに数多くいらっしゃいました。

しかし今は、関節リウマチを発病しても、ほとんどの方は、これまでとあまり変わらない日常生活が送れるようになっています。その第1の理由は治療効果の高い薬が次々と開発されたことです。病気の活動性を抑え、関節破壊を食い止める薬の登場によって、関節リウマチの治療目標は、"痛みなどの症状を抑えること"から、"「寛解」に持っていくこと"へと大きく変わりました。

「寛解」とは、病気が治ったわけではないけれど、病気の勢いを十分に抑えることができていて、病気が進行しない状態です。寛解には炎症反応がなくなり、患者さんも症状を感じない状態(臨床的寛解)、関節破壊の進行が抑えられている状態(構造的寛解)、関節をはじめとして身体の機能が維持できている状態(機能的寛解)の3つがあります。 (治療の基本「T2Tとは」)。

その寛解を達成し、達成後も寛解の状態を維持することを可能にしたのが「抗リウマチ薬」と「バイオ医薬品」という2つのタイプの薬です。

関節リウマチの治療薬には、①痛みなどの症状を抑える薬と②原因に働きかける薬がありますが、抗リウマチ薬とバイオ医薬品は②原因に働きかける薬です(お薬による治療)。とくにバイオ医薬品は、バイオテクノロジーによって生み出された薬で、病気の活動性を抑える作用にすぐれており、早い時期であれば壊れた関節を修復する効果も期待できます(バイオ医薬品とは)。

これらの薬の効果を最大限に活用し、寛解に持ち込むためにもっとも重要なのは、治療の初期段階から必要な薬剤を必要な量で正しく投与することです。かつての関節リウマチの治療は、作用の弱い薬から使い始め、症状の進行に沿って徐々に強い薬へと切り替えるというものでしたが、抗リウマチ薬やバイオ医薬品は、関節破壊が進む前に使うことによって、病気の活動性をしっかりと抑え込むことができるのです。

治療をすることで、病気がよくなり患者さんの治療意欲が向上

私たち東京女子医科大学附属病院 膠原病リウマチ痛風センターでは、年に2回、患者さんのご協力を得て、病状や問題点を分析するための調査(名称:IORRA調査*)を行っています。その結果をまとめたのが図1「関節リウマチの疾患活動性の変化」と図2「薬剤使用頻度の変化」です。


[出典]東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター
IORRAニュースNO.25 2013年10月

図1をみてみると、調査を開始した2000年、寛解にいたる患者さんは8%ほどでしたが、2014年には50%を超えています。その一方で、「高疾患活動性」といわれる重症の患者さんは20%から3%にまで減っています。図2をあわせてみると、これは、抗リウマチ薬やバイオ医薬品がもたらした成果と考えることが妥当でしょう。図2で示されているように、抗リウマチ薬、その1つであるメトトレキサート、そしてバイオ医薬品を使用される方が増えるのに伴い、図1では、治療成績が向上していることがわかります。

このように寛解を目標に関節リウマチの治療を行えるようになり、実際に寛解が得られた患者さんが増えてきた最大の理由は、先ほども申し上げましたように、新しい薬の登場ですが、理由はそれだけではありません。


第2の理由として、関節リウマチの診断基準や寛解の基準、薬の使用を含めた診療ガイドラインなどの基盤が整ったことがあげられます。このようなインフラ整備により、治療者側の意識や治療方針の統一が図れるようになったことで、治療目標が明確になりました。

第3の理由として、関節リウマチは治療すればよくなるということを多くの方が知るようになり、社会の共通認識になったことがあげられます。とくに第3の理由は、「積極的に治療しよう」という患者さんの意欲に強く影響しています。

関節リウマチは不治の病という認識は過去のものです。病気になる前の生活を取り戻すことも可能になっているので、あきらめずに治療に取り組んでいただきたいと思います。

*<IORRA調査とは>
IORRA調査では、東京女子医科大学附属病院、膠原病リウマチ痛風センターに通ってこられる関節リウマチ患者さん約6000人全員に30ページほどの調査用紙を渡して、調査にご協力をいただいています。調査用紙の回収率は過去13年間ずっと98%を保っています。このような調査としては驚くほど高い回収率です。

山中先生は、「高い回収率から、患者さんたちの真剣な思いを感じずにはいられません。集計システムを含め、ここまで精度の高いデータは世界にも例がなく、それを患者さんやそのご家族など多くの方に有益な情報としてフィードバックすること、そして何よりもよりよい関節リウマチの治療に生かすことが私たちの責務だと考えています」と話します。


【次回予告】
第2回目のコラムでは、関節リウマチの治療で知っておきたいことや注意してほしいこと、そして、関節リウマチ治療の将来などについて、引き続き山中先生にうかがいます。

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Vol.11関節リウマチに合併しやすい「シェーグレン症候群」への対策~乾燥による不快症状を改善するために~ 筑波大学医学医療系 内科(膠原病・リウマチ・アレルギー) 教授 住田 孝之先生
Vol.10関節リウマチ治療の経済的課題(後)東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センター 講師 田中 榮一 先生
Vol.9関節リウマチ治療の経済的課題(前)東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センター 講師 田中 榮一 先生
Vol.8 リウマチ患者さんの災害準備と対応(後)実際に避難所生活を送ることになったら 独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院 リウマチ疾患研究センター センター長 齋藤 輝信 先生
Vol.7 リウマチ患者さんの災害準備と対応(前)いざというとき本当に役立つ「災害への備え」独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院リウマチ疾患研究センター センター長 齋藤 輝信 先生
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