リウマチコラム

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Vol.12足病変の診断と治療 適切な治療で歩く機能を保つために(前) 奈良県立医科大学リウマチセンター 整形外科 原 良太 先生

関節リウマチの「足病変」は、他の部位と同様に関節や腱鞘での滑膜炎が続き関節が壊れるだけでなく、外反母趾や扁平足など様々な変形をきたします。関節炎、関節破壊による痛みだけでなく、変形からできるタコやウオノメによる痛みも加われば「立つ」「歩く」といった基本的な機能にも障害が及ぶため、QOL(生活の質)を著しく低下させてしまいます。
その診断と治療について、奈良県立医科大学リウマチセンターの原 良太先生にうかがいました。
コラムは2回に分けてお届けします。

関節リウマチの症状が足から始まることもある

関節リウマチの症状としてよく知られているものに、手指の関節炎やこわばりがありますが、なかには足部から発症する方もいます。その割合は、前の方(前足部)では約4割程度との報告もあり、手に次いで多い発症部位となっています。

手指の関節に腫れ、痛みや朝のこわばりがある場合、患者さんは関節リウマチを心配して受診されますが、足の痛みで整形外科を受診された患者さんの中には関節リウマチとは思っていなかったとおっしゃる方もいます。

また、関節リウマチの治療を開始されている患者さんの中でも、足の痛みが関節リウマチによるものと考えていないため、診察の際に足の症状を訴えない場合も少なくありません。そのため、関節リウマチによる足の病変は見逃されやすい傾向にあります。

足から発症される方の場合、最初に痛みを感じる部位として多いのは前足部、とくに足の趾(ゆび)の付け根の関節(中足趾節関節=MTP関節)です。歩行時などの動作を行った際に痛みや違和感があり、気がつくことが多いようです。

足部の関節炎を放置すると、関節破壊や変形の進行を招くことがあります。治療開始後に足部の関節炎が、治療後に血液検査が正常になっても足以外の関節痛がなくなっていても足の痛みや違和感が続いていれば、必ず主治医に相談してください。

リウマチ患者さんの足の変形はさまざま


関節リウマチのために起こる足の骨の変形には、外反母趾、内反小趾、開張足、扁平足、槌指(ハンマートゥ、マレットトゥ)、鉤爪趾(クロートゥ)、扁平三角状変形などがあります。

[足部の変形]

外反母趾

外反母趾(がいはんぼし):親指の付け根が「く」の字となり、小趾側に曲がる


内反小趾

内反小趾(ないはんしょうし):小指の付け根が「く」の字となり、母趾側に曲がる


開張足

開張足(かいちょうそく):足の横アーチがくずれ平坦になる


扁平足

扁平足(へんぺいそく):足の縦アーチがくずれ平坦になる


槌趾


槌趾(つちゆび)
(ハンマートゥ)母趾以外の足の趾の第2関節(近位趾節間関節=PIP関節)が曲がって、ハンマーのようになる変形
(マレットトゥ)足の趾の第1関節(遠位趾節間関節=DIP関節)が曲がる変形
鉤爪趾(かぎづめし)(クロートゥ) : MTP関節が過伸展し、第1、2関節が曲がった変形

扁平三角状変形 : 外反母趾、内反小趾、第2から4趾のMTP関節の背側脱臼、開張足が組み合わさった変形

足の変形は、痛みや足の疲れやすさ、歩き方の変化につながり、足の一部分に過剰に負担がかかるために、皮膚の異常や爪の変形をも引き起こします。

[皮膚の異常]
胼胝(べんち):皮膚の一部が慢性の刺激を受けて角質が厚くなり、皮膚が硬く厚くなって盛り上がる。タコともいう
鶏眼(けいがん):胼胝の状態から角質層が深層に突起し痛みを伴うもの。ウオノメともいう。5~7mmほどで中心にニワトリの目のような芯があり、歩行や圧迫で強い痛みを感じる

[爪の異常]
巻き爪:足の指の爪の両端の先端部が、内側に巻き込んだ状態
肥厚爪(ひこうそう):長期間爪に物理的な圧迫が加わるなどしたために、爪が分厚くなった状態
爪甲下角質増殖(そうこうかかくしつぞうしょく):爪が分厚くなって粉状に剥がれ落ちるようになった状態

さまざまな足病変による痛みで歩行に支障があれば放置していてはいけません。関節炎や腱鞘炎など抗リウマチ薬による治療強化が可能な状態なのか、足底挿板(そくていそうばん)などの装具療法が有効なのか、または手術治療をうけた方がよいかなど十分に主治医の先生と相談してみてください。


足部の検査は画像診断が有用
,原良太,奈良県立医科大学,
「すでにリウマチの治療を
している方も足に違和感を
覚えたら主治医に告げてく
ださい」

さまざまな足病変の診断は、理学的検査、画像検査で確かめます。
理学的検査では足の動きなども確認します。関節リウマチでは、炎症のある関節が腫れ(腫脹)、指で押すと痛み(圧痛)を感じるのが特徴です。足部での関節炎の診断はむくみの影響などもあり他の部位と比べても診断が難しい場合も多いので、その場合は画像検査を行います。

画像検査には、レントゲンやCT、MRI、超音波などがあります。
レントゲン検査では、骨びらんなどの関節破壊、さまざまな変形、脱臼の有無が確認できます。骨の一部が欠けている骨びらんは関節の近くにみられ、関節リウマチに比較的特徴的であるため、診断をつける際に重要な所見となります。また、骨びらんは関節炎が続くことで変化(進行)がみられますので、1年ごとに検査を行うなど繰り返すことで治療の評価を行います。
超音波検査は、関節や腱鞘での腫れや炎症の程度が詳しくわかる検査です。足部は滑膜炎がおこる部位が浅く、超音波で評価がしやすい部位です。MRIよりも手軽に行えるという利点もあり、診断や治療の効果などをみるときに繰り返し行うことができます。

足部の滑膜炎、特に前足部の滑膜炎などは自覚症状が乏しいことも多いことから画像検査できちんとみつけることが重要です。

足部の滑膜炎は、痛みがあまりないこともあり、炎症があっても薬物療法に積極的になれないという方もいらっしゃいます。しかし、炎症が続くことで将来の関節破壊や変形につながる危険があるため、抗リウマチ薬治療の見直しなどについて主治医と十分に相談する必要があります。

足は手と違い、履物に隠れていて見えません。痛みや変形など気になることがあるときは、積極的に足を主治医に見せることが悩みの解決への第一歩となるはずです。

ここがポイント!関節リウマチの足病変


次回は、足病変の手術療法を中心にお話しします。

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