リウマチコラム

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Vol.13足病変の診断と治療 適切な治療で歩く機能を保つために(後) 奈良県立医科大学リウマチセンター 整形外科 原 良太 先生

前回のコラムでは、足病変の解説と診断について、奈良県立医科大学リウマチセンターの原 良太先生にうかがいました。
後編では、手術療法について詳しく解説いただきます。
手術をこわいと感じる方も少なくないと思いますが、足の変形やタコやウオノメなどの痛みで歩くことが困難になった患者さんにとって、手術は日常生活の質を向上させる有効な手段です。近年は、前足部変形の手術では関節を温存する手術が行われるなど、術式に変化がでてきているものもあります。

足病変の手術治療の適応

関節リウマチの足病変の治療には、他の部位と同様に保存療法と手術療法があり、保存療法には薬物療法も含まれます。生物学的製剤など新しい薬の登場によって、関節リウマチを寛解に導くことが可能となりました。早期からしっかり薬物療法を行うことによって、足部の滑膜炎と関節破壊を抑えることができます。
ただし、関節破壊が進行し変形が目立ってきた、もしくは、日常生活が不自由になってきた、強い痛みがあるなどの場合には装具による治療や手術を検討します。

関節リウマチの足部の手術療法

関節リウマチの足部の手術には、滑膜切除術、人工関節置換術、関節固定術、切除関節形成術、関節温存手術などがあります。

手術について、前足部と後足部にわけてお話します。
【関節リウマチで行われる足の関節のおもな手術】

関節リウマチで行われる足の関節のおもな手術,滑膜切除術,人工関節置換術,切除関節形成術,関節固定術,関節温存手術

※1関節鏡視下手術:関節を大きく切開しないため、術後の痛みが少なく回復が早い。近年は手術技術の進歩により手指、足趾関節などの小関節でも鏡視下手術が可能となってきている。 ※2距腿(きょたい)関節:足首の関節のこと。脛骨、腓骨、距骨からなる蝶番関節である(図参照)。 ※3MTP関節:足の指の付け根にある関節のこと(図参照)。

前足部の変形矯正手術では関節を残す関節温存手術が普及
前足部の関節

前足部は外反母趾、内反小趾、槌趾変形、関節の脱臼、開張足など多彩な変形がみられ、痛みを伴う胼胝ができてしまいます。このような変形に対してはさまざまな手術治療があり、足部の中で最も多く手術治療が必要とされる部位です。

以前はMTP関節を固定(母趾)したり、切除(1-5趾)することが多かったのですが、近年、バイオ医薬品の登場など薬物治療の発展により、関節炎を制御することが可能になってきた背景もあり、関節を残したままで、骨を切って変形を矯正する関節温存手術(第1-5矯正骨切り術)が適応される機会が増えてきました。

手術をうけられる方の多くは胼胝(べんち)による痛みや変形による歩きにくさを長年我慢してこられていますので、高度の変形があったり、脱臼した関節が固まっていたり(拘縮)、骨が弱くなっていたりと重症化しています。

前足部の変形でお困りの方で、装具などの保存治療で効果がない場合は手術治療が必要な状態がどうかを主治医や整形外科医と相談してみてください。重症化しても手術治療は可能ですが、状態によっては手術を先延ばしにしないという判断も重要です。

◆後足部(かかと側)の手術

後足部(かかと側)

後足部の関節には、かかとの骨である踵骨(しょうこつ)と、その上に乗っている距骨(きょこつ)がつながる距踵(きょしょう)関節と、距骨とすねの骨である脛骨(けいこつ)がつながる距腿(きょたい)関節(足首)があります。

人工足関節置換術では、距腿関節を人工関節に置き換えます。
他の人工関節と同様に、痛みがなくなるだけでなく関節の動きを残すことができます。比較的高齢の方や距腿関節の変形がひどくない場合に限られるなど、股関節や膝関節の人工関節と比べると適応に制限はありますが、条件があえば長年にわたって痛みなく動きを保つことが期待できる手術です。

関節固定術


関節固定術は、後足部では距腿関節を固定する手術、距踵関節を固定する手術、距腿関節と距踵下関節の両方を固定する手術があります。関節破壊の進行度などに応じて手術法を選びます。近年では負担が少なく回復が早い関節鏡を使った固定手術も増えてきています。

関節を固定してしまうと、足が動かなくなってしまうのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、固定した隣の関節がある程度代償してくれます。

両方の後足部に手術が必要な場合は、患者さんの年齢や変形の程度、生活背景などを総合的に考慮し、片方だけ固定術を行ってもう一方は関節の可動域がより広い人工足関節にするなどの工夫をします。

手術に踏み切るタイミングは?

原良太,奈良県立医科大学
「手術をあまり先延ばし
にしないほうが良い場合も
あります」

手術で一番大切なことは、術後に患者さんのQOL(生活の質)が向上し、満足度が得られることです。患者さん一人ひとりの足の状態を見極め、年齢や生活背景を考慮した上で、患者さんの希望をうかがい、話し合いながら、いつ、どのような手術を行うのかを決めていきます。

足部の適切な手術のタイミングを逃さないために、内科医と整形外科医の連携もますます重要になると考えています。
患者さん自身も、医師の意見を聞くとともにご自身がお困りのことや希望も率直に伝えて、二人三脚で治療を続けていってください。

ここがポイント!関節リウマチの足病変

2018年9月更新

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