リウマチコラム

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病気の勢いを十分に抑えることができていて、病気が進行しない「寛解」を目指せるようになった関節リウマチの治療。リウマチコラムの第1回では、東京女子医科大学附属病院膠原病リウマチ痛風センター、所長の山中寿先生に、治療効果の高いお薬の登場などによって関節リウマチの治療目標が変わり、患者さんの治療意欲も向上していることなどをうかがいました。
今回は、これからのリウマチ治療がどのように進歩していくのか、それを実現させるために解決しなければならない課題などについてお聞きします。

新薬や新しい治療法の開発が速いスピードで進んでいる

関節リウマチの治療は、この20年間で大きく進歩しました。とくに、13年ほど前に登場したバイオ医薬品 (お薬による治療「バイオ医薬品によって変わった関節リウマチの治療 」) の影響は大きく、多くの方が、関節リウマチの治療目標である「寛解」を得て、その状態を保てるようになっています (リウマチコラム Vol.1 )。 その結果、明らかに関節リウマチの患者さんのQOL(生活の質)は向上しました。

一方、残念ながら関節リウマチは「完治」する病気とはまだなっていません。ですが、薬剤の開発は驚くほど速いスピードで進んでいますから、今後20年間で関節リウマチが治る病気になることも夢ではないでしょう。病気が完全に治るだけではなく、壊れた関節を修復する治療法や、関節リウマチの発症を防ぐ方法などが開発される可能性もあります。

関節リウマチは必ず遺伝する病気ではありませんが、関節リウマチになりやすい遺伝子をもつ人がおられます。したがって、そのような方になんらかの処置を行うことで、発症を予防することも、いつの日か現実になるのではないかと考えています。

このような新しい薬剤や治療法の研究・開発とあわせて、急いで進めていかなければならないことがあります。その1つが治療費にかかわる問題の解決です。

高額な治療費が新たな悩みを生むこともある

バイオ医薬品は高い治療効果を望めますが、高額であるため経済的な負担に悩む患者さんも多くおられます。

関節リウマチの患者さんによって設立された、「日本リウマチ友の会」が発行している『2010年 リウマチ白書』からは、高額な治療費を支払うために、さまざまなことを我慢している患者さんの姿がみえてきます。たとえば、衣服や外食、趣味などにかかる費用をけずって治療費を捻出されている方も多いのです。また、治療にお金がかかることで、家族に申し訳ないと感じている人も少なくありません。


「治療費の捻出にご苦労されている方も少なくありません」


関節リウマチは女性に多い病気 (リウマチとは「関節リウマチの患者さん像」 ) ですが、夫や子どもなど家族のための出費を抑えられず、自分の楽しみを我慢して治療を続けていらっしゃる患者さんのお話を聞くたびに、家族に対する深い愛情が伝わってきて、心が揺さぶられます。

治療にかかわる経済的な問題は、働いている患者さんにとっても大きな関心事です。関節リウマチが発病すると、関節の痛みのために仕事を続けられない患者さんや、治療を続けるためには仕事をやめるわけにはいかないのに、受診や体調不良のために休む日数が増えて、職場で気を遣うというお話もよく耳にします。関節リウマチに関する正しい知識を患者さん以外の人たちにも持っていただくことで、病気になっても働ける環境が整備されることを望みます。

患者さんが、有効な治療を経済的な理由から断念するような状況は、できるだけなくさなくてはなりません。その意味で、バイオシミラーの登場は治療の選択を大きく広げたといえるでしょう。

関節リウマチ治療の真の目的に向かって前へ進もう

リウマチ治療の真の目的について語る山中先生

関節リウマチの治療目標が寛解にあることはすでにお話ししましたが、大切なのは何のために寛解へもち込むのかという“真の目的”を忘れないことです。

寛解が持続できれば関節の破壊は防げるようになりましたが、寛解は目的ではありません。真の目的は、患者さんがより豊かな人生を送っていただくことだと思っています。病気のために人生設計を極力変更しないために、寛解を目指し、寛解の状態を保つ適切な治療を続けていく必要があります。

関節リウマチは慢性の病気で治療は長期にわたります。したがって、患者さんは医師をはじめとする医療スタッフと良好なコミュニケーションを築き、相互理解を深め、信頼関係のなかで治療を進めていくことが求められます。

その土台となるのが、病気や治療に関する正しい知識です。治療を納得して受けるためには、正しい知識が必要です。いまはインターネットなどで多くの情報を得ることができますが、すべての情報が正しいとは限りません。医学的な根拠がないものも散見されますので、すべてを鵜呑みにするのは危険です。

病気について調べるときに限らず、私たちは自分の考えに近い情報を探しだす傾向があります。とくに、病気になり、つらい思いをしていると、耳に心地よい情報に惹かれてしまいがちですが、病気や治療の知識は医学的に根拠があるもののなかから、バランスよく得るように心がけましょう。

繰り返しになりますが、病気を治療するのはご自身の人生を豊かなものにするためです。ですから、どうか自分のしたいことをあきらめないでいただきたいと思います。

意外に思われるかもしれませんが、関節リウマチになって人生で大切なものに気づくことができたとおっしゃる患者さんは少なくありません。ときには落ち込むことがあっても、より実りのある人生を目指して前に進んで行きましょう。私たち医療者はその実現のためにサポートしていきます。

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Vol.11関節リウマチに合併しやすい「シェーグレン症候群」への対策~乾燥による不快症状を改善するために~ 筑波大学医学医療系 内科(膠原病・リウマチ・アレルギー) 教授 住田 孝之先生
Vol.10関節リウマチ治療の経済的課題(後)東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センター 講師 田中 榮一 先生
Vol.9関節リウマチ治療の経済的課題(前)東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センター 講師 田中 榮一 先生
Vol.8 リウマチ患者さんの災害準備と対応(後)実際に避難所生活を送ることになったら 独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院 リウマチ疾患研究センター センター長 齋藤 輝信 先生
Vol.7 リウマチ患者さんの災害準備と対応(前)いざというとき本当に役立つ「災害への備え」独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院リウマチ疾患研究センター センター長 齋藤 輝信 先生
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