リウマチコラム

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関節リウマチの治療に使われる薬の多くは、免疫のはたらきを抑える作用があります。薬によって、免疫異常が起こりにくくなり関節リウマチの症状が改善すると、細菌やウイルスなどの外敵から体を守る力が低下し、感染症にかかりやすくなります。風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症が流行する冬は、とくに予防を心がけたい季節です。
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター・所長の山中寿先生に、呼吸器感染症の予防策についてお話を聞きました。

関節リウマチの人にとって呼吸器感染症はなぜこわい?

冬になると呼吸器感染症が流行します。それは呼吸器感染症の原因となる細菌やウイルスは、気温が低く空気が乾燥した環境を好み、増殖するからです。
関節リウマチの患者さんはもともと気管支が弱く、呼吸器感染症にかかりやすい方が多いので、寒い季節は注意が必要です。
また、繰り返し呼吸器感染症にかかると気管支の壁が破壊され、気管支拡張症になってしまうことがあります。気管支拡張症の方は気管支の壁が傷ついているため、細菌やウイルスがつきやすく、増殖しやすいことから、ますます呼吸器感染症のリスクが高まるという悪循環も生じます。

そんな呼吸器感染症のなかでも肺炎は繰り返しやすい傾向があるので、これまでに肺炎にかかったことのある方はとくに注意してください。
また、高齢の方やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など肺の持病がある方、喫煙している方は、呼吸器感染症にかかりやすいこともわかっています。

予防接種で防げるインフルエンザと肺炎
山中先生
「呼吸器感染症はきちんとした対策で予防することができます」と語る山中先生

呼吸器感染症の予防としては、予防接種と日常生活における対策という2つの方法があります。
まず予防接種ですが、みなさんもよくご存知のインフルエンザのほかに、肺炎球菌という細菌が原因で起こる肺炎を予防するワクチンがあります。肺炎球菌は、日本人の成人がかかる肺炎の原因菌として、もっとも一般的なものです。

予防接種について、少し詳しく説明していきましょう。



インフルエンザのワクチン

インフルエンザのワクチンは、そのシーズンに流行しそうな種類を予測して製造されます。この予測が必ず当たるとは限りませんが、ワクチンを接種していれば、インフルエンザに感染したとしても発症が抑えられたり重症化を避けられるというメリットがあります。
気をつけたいのは予防接種をする時期です。インフルエンザワクチンの効果が出るのは、接種後2週間程度たってからです。インフルエンザの流行時期は通常12月~3月頃で、1~2月頃に流行のピークを迎えるため、11月中に接種するのが一般的といわれてきました。しかし、最近は暖冬などの影響で流行時期がずれ込み、4月頃まで流行が続くことも少なくありません。
実は、インフルエンザワクチンの効果は5カ月程度で切れてしまいます。そのため、あまりにも早い時期に接種するのは考えものといえます。判断のむずかしいところですが、天気の長期予報をチェックしながら接種時期を検討していただくとよいでしょう。

一方、肺炎球菌の予防接種については、65歳以上の方を対象に公費助成の制度があります。下記の表に該当する年齢で、今まで肺炎球菌の予防接種を受けたことのない方なら、1人1回、定期接種が受けられます。
定期接種とは、予防接種法に基づいて自治体(市町村と特別区)が実施する予防接種のことで、接種費用の一部が公費で負担されます。

肺炎球菌ワクチンの定期接種対象者


定期接種の開始時期など詳細については、自治体によって異なるので、お住いの市町村に問い合わせてください。
今年度、定期接種に該当しないが肺炎球菌ワクチンの接種を希望する方は、関節リウマチの主治医や、日常的にかかっているかかりつけ医に相談しましょう。

肺炎球菌ワクチンの効果は、5年程度持続するとされています。

日常生活でできる効果的な感染予防

手洗いやマスクの着用、うがいなど、日常生活のなかで行う対策も呼吸器感染症の予防に効果的です。

手洗い

とくに手洗いの有効性は科学的にも明らかなので、外出から帰ったときや食事の前、調理の前には、せっけんで手を洗う習慣をぜひ身につけていただきたいと思います。爪の周辺や手のひらの中央、手首は洗い残しやすい部分なので、意識してよく洗ってください。とくに爪を伸ばしている方は、念入りに洗うようにしてください。
最近は、飲食店などの入口に消毒用アルコール(速乾性消毒用アルコール製剤)が用意されていることも多いので、利用されるとよいでしょう。ただし、アルコール過敏症の方は控えてください。

マスク

マスクは、細菌やウイルスがついた手で口のまわりを触るのを防ぐという意味では、予防効果が期待できます。私たちは日ごろから意識せずに、顔、とくに口の周りをひんぱんに手で触れているのです。
また、マスクの着用は、ご自身が風邪などをひいたときに、他人への感染を防ぐことに有効です。咳エチケットとして心がけたいものです。とくに関節リウマチの患者さんがお近くにいる方は感染予防に気をつけていただきたいと思います。

うがい

うがいの感染予防効果についてはさまざまな意見がありますが、一定の効果は期待できると考えられます。とくに高齢の方は、うがいや歯磨きで口の中を清潔に保つことが肺炎の予防にもつながります。

家族間での感染を防ぐ方法もご紹介しましょう。家庭内で呼吸器感染症の患者さんが出た場合、当然のことながら通常よりも感染のリスクが高くなります。呼吸器感染症の原因となる細菌やウイルスは、感染者の鼻水や唾液に含まれています。咳やくしゃみ、感染者の手などを介して、ドアノブや手すりなどを中心に、さまざまなところに付着していますので、掃除はこまめに行ってください。また、食事の前には手洗いをするということも習慣にしてください。そして、タオルの共用を避けるのも感染予防の基本といえます。

禁煙

もう1つ、呼吸器感染症の予防策として忘れてはならないのが禁煙です。喫煙者は呼吸器感染症にかかりやすく、また喫煙は関節リウマチの原因の1つともいわれていますので、喫煙されている方はぜひ禁煙しましょう。

それでも、呼吸器感染症にかかったら

咳や痰など、呼吸器感染症が疑われる症状に気づいたら、できるだけ早く受診しましょう。関節リウマチで治療中の方は、インフルエンザや肺炎にかかっても熱やだるさがあまり出ないことがあります。それだけに咳や痰が重要なサインになります。
症状が軽いうちに治療すれば、体の負担も最小限ですみます。とくにインフルエンザは、悪化すると肺炎に移行することもあるので、早期の治療が重要です。

病院にかかる際は、関節リウマチの主治医に診てもらうのが望ましいですが、近くの医療機関でもかまいません。その場合は、関節リウマチで治療中であることと、治療に用いられる薬の種類をきちんと伝えてください。

規則正しい生活、バランスのよい食事、疲れをためないなど、基本的な体調管理にも気を配り、呼吸器感染症が流行しやすいシーズンを乗り切ってください。

ここがポイント呼吸器感染症対策
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Vol.11関節リウマチに合併しやすい「シェーグレン症候群」への対策~乾燥による不快症状を改善するために~ 筑波大学医学医療系 内科(膠原病・リウマチ・アレルギー) 教授 住田 孝之先生
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Vol.9関節リウマチ治療の経済的課題(前)東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センター 講師 田中 榮一 先生
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