リウマチコラム

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Vol.7 リウマチ患者さんの災害準備と対応(前)いざというとき本当に役立つ「災害への備え」独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院リウマチ疾患研究センター センター長 齋藤 輝信 先生

日本は世界の中でも災害の多い国です。5年前の東日本大震災に続き、今年4月には不幸にも熊本/大分を震源とする熊本地震が発生してしまいました。関節リウマチの方は、もしも被災して避難所生活を送ることになったら……と大きな不安を感じているかもしれません。備えあれば憂いなしといいます。東日本大震災で自らも被災しながら、患者さんの治療や支援に当たられた経験をもつ、独立行政法人 国立病院機構 仙台西多賀病院リウマチ疾患研究センター センター長の齋藤輝信先生に、リウマチ患者さんの災害準備と対応についてうかがいました。2回に分けてお届けします。今回は「災害への備え」について教えていただきます。

非常用のお薬セットを準備しておくことがいちばん大切

仙台西多賀病院は、宮城県仙台市の南部に広がる太白区にあります。2011年の東日本大震災では、患者さんも私たち医療者も大きな被害を受けましたが、同時に災害時の対応や備えについてたくさんのことを学びました。それをみなさんにお伝えすることは、私たちの役割の一つだと考えています。

災害は多く突然起こるものです。そのため、日頃から備えておく必要があります。とくに慢性の疾患がある方は、お薬をいつでも持ち出せるようにしておくことが、何よりも重要です。
いつも飲んでいる関節リウマチ関連のお薬は、非常用に3日分くらいを袋に入れて、決まった場所に保管しておきましょう。そこにはお薬を飲むための水も一緒に用意しておきます。
炎症を抑えるステロイド薬を飲んでいる場合は、急に服用をやめてしまうと反動で重い症状が出てしまうことがあるので、非常用の薬には必ずステロイド薬を準備しておくようにしましょう。

病院でお薬をもらってきたら、その都度非常用の薬を新しいものに交換するという習慣をつけておくと、お薬の処方内容が変わっても安心ですし、お薬の期限切れを防ぐこともできます。

非常用のお薬置き場は2カ所つくっておくと安心
非常用のお薬セット

地震、水害、土砂崩れなどで家屋に被害が及ぶと、家の一部が壊れ、玄関が使えなくなったりすることがあります。玄関先に非常用のお薬が置いてあっても持ち出せなくなってしまうので、非常用のお薬置き場は2カ所つくっておきましょう。たとえば、1カ所は玄関に通じる場所、もう1カ所は勝手口や、もしものときに出られる窓に通じる場所にします。こうしておけば、どちらかが障害物のために通れなくなっても、別のところからお薬を持って外に出られます。家から外への逃げ道は、2つ以上考えておくと安心です。

非常用の荷物はコンパクトにまとめよう
非常用の荷物はコンパクトに

避難所で生活することを考えると、ついあれもこれもとたくさん準備したくなりますが、非常用の荷物は軽くて丈夫、防水性があり、透明や片面透明の内容物が見える袋やポシェットに入れたほうが耐久性や視認性が高いため持ち出しやすく現実的です。
非常用のお薬セットとして、お薬と水、保険証のコピー、薬局でもらったお薬の説明書程度をひとまとめにしておき、パッと持ち出せるようにしておきます。お薬手帳も日ごろから携帯するようにしておくと、いざというときに安心です。

「お薬セット」を非常用持ち出し袋の中に入れてしまうと、朝などこわばりが強いときには大きな袋を持ち出せないこともあるので、お薬セットは非常用持ち出し袋の中に入れないほうがよいのです。

お薬セット


非常用持ち出し袋の内容は、災害が起こってから食料や医療の支援が入るまでの、2~3日をしのぐためのものなので、「必要最低限のものを少量ずつ」が基本です。

非常用持ちだし袋の中身

水、保険証のコピーはお薬セットの中にも入れておきますが、心配なら非常用持ち出し袋にも入れるとよいでしょう。このほかにも、それぞれ皆さんの事情に合わせて準備するものがあると思いますが、実際に持ってみて、これなら無理なく運び出せるという程度にまとめます。

普段から持ち歩いているバッグには、財布、携帯電話、保険証、診察券、お薬手帳などを入れておき、家にいるときもそばに置いておくと持って出やすいでしょう。また、杖や頸椎カラー、コルセットなど生活をする上で必要な装具を使用している方は、常に持ち出せるようにしておきましょう。

持ち出す優先順位は、まずお薬セット、次に非常用持ち出し袋です。ただし、本当に危険が迫っているときは、逃げて身を守ることを優先してください。

外出先で被災したときのための備え
外出用セット

外出先で被災した場合は、無理に帰宅しようとしないほうがよいこともあります。そのようなときのために、バッグの中には、財布などのほかに、保険証、診察券、お薬手帳、1、2日分のお薬をいつも入れておくと安心です。これらを「外出用セット」としてポーチなどにまとめ、できれば、お水も常に持ち歩くようにします。寒い時期は、使い捨てカイロを1個バッグに入れておくとよいかもしれません。

携帯電話やスマートフォンのアドレス帳には、家族や友人のほか、かかりつけの医療機関の電話番号と、後述する「災害時リウマチ患者支援事業」の協力医療機関のなかから、お住まいの地域の施設の電話番号を登録しておくとよいでしょう。

災害時の通信事情

※3 災害用伝言ダイヤル http://www.ntt.co.jp/saitai/171.html

いざというとき役に立つ日頃のトレーニング
避難経路

各地域には自治体が指定する避難所がありますが、皆さんは家や駅からそこへ行く経路をご存じでしょうか。ぜひ一度、実際にその道を歩いてみてください。経路は、1つだけでなく複数覚えておくと、土砂などで通常の道が通れなくなってもあわてずに別の道を通って行くことができます。
また、お住まいの地域に起こりやすい災害について知っておくことも大切です。


斉藤先生
「実際に災害に遭遇すると予想外のことが多くありますが、繰り返し災害対策を実践しておくことで、落ち着いて行動ができます」

私が患者さんにおすすめしているのは、毎月1回、避難訓練の日を設けることです。大げさなものではなく、お薬セットや非常持ち出し袋の中身を確認し、避難所まで歩いてみるという程度で十分。「心の備え」をしておくことが目的です。
毎月が大変なら、季節ごとや1年に1回誕生日などに行うのもよいでしょう。季節ごとに行えば、その時期の条件に合う備えに気づかされます。
実際の訓練では、避難所までの経路に河川の氾濫、海岸における津波、土砂災害、原子力発電所のある地域ではそこからの避難も想定します。いざという場合、臨時の避難が可能なマンションや屈強な建物、高台の存在等をイメージしておくことが大切です。


日本リウマチ財団では、災害発生時に関節リウマチの患者さんを支援する、「災害時リウマチ患者支援事業」を2007年9月に開始しました。この事業は、災害時に関節リウマチの患者さんが適切に治療を継続できる(現在の治療に使用していた薬と同じものがなければ、効果や安全性が可能な限り近い薬、先発品がなければ、限りなく近いジェネリック医薬品を使用する等)、病気が悪化しないようにするためのもので、2012年9月の時点で、全国559カ所の医療機関がこの事業に協力しています。自分が通院している病院・クリニックが被災して治療が受けられないときは、協力医療機関が患者さんの診療を行います。

お住いの地域やその周辺の協力医療機関の場所や連絡先を日本リウマチ財団のホームページ「リウマチ情報センター」内にある災害時リウマチ患者支援事業協力医療機関台帳(※4)で確認しておくとよいでしょう。

※4 http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/saigaijishien/rm500-02.html


日頃からの災害対策は、万が一のとき必ず活きてきます。心配しすぎることはありませんが、侮らず、災害に備えてください。

ここがポイント!災害対策・非常用お薬セットは2カ所に分けておいておく・指定避難所への道を実際に歩き、定期的にプチ防災訓練をする・災害時リウマチ患者支援事業協力医療機関台帳で、地域の協力医療機関を確認しておく
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