ご挨拶

私が医師になったころの関節リウマチの薬物治療は、患者さんの痛みを取ることがせいいっぱいでした。そして病気が進行して関節が破壊されてしまったら、あとは手術で関節の機能を何とか回復させるほかありませんでした。そのため、日常生活を自立して送れなくなる方も、残念なことに数多くいらっしゃいました。

しかし今は、新しい薬が次々と開発されたことによって、関節リウマチの治療は格段に進歩しました。そしてほとんどの患者さんは、発病前とあまり変わらない日常生活が送れるようになっています。 

関節リウマチの治療目標は、まず「寛解」状態を達成することです。寛解にもち込むために重要なのは、適切に診断し、治療の初期段階から必要な薬剤を必要な量、正しく投与することです。かつての関節リウマチの治療は、作用の弱い薬から使い始め、症状の進行に沿って徐々に強い薬へと切り替えるというものでしたが、関節破壊が進む前に抗リウマチ薬や生物学的製剤を使うことによって、病気の活動性をしっかりと抑え込むことが大切なのです。
関節リウマチは不治の病という認識は過去のものです。病気になる前と同じ生活を取り戻すことも可能になっていますので、あきらめずに治療に取り組んでいただきたいと思います。

そして、病気になってもそれに打ち克って、より豊かな人生を歩んでいただきたいと思っています。病気のために人生設計を極力変更しないためには、寛解を目指し、寛解の状態を保つ適切な治療を続けていく必要があります。

プロフィール

山中 寿(やまなか・ひさし)
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長。1980年三重大学医学部卒業。
1983年東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター助手。1985年米国スクリプス・クリニック研究所研究員。2003年東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター教授、2008年より現職。同センターが2000年から取り組んでいる関節リウマチ患者を対象とした大規模調査であるIORRA(Institute of Rheumatology、Rheumatoid Arthritics)の生みの親。その実績が評価され、2012年度の日本リウマチ学会学会賞を受賞。

著書

『関節リウマチのことがよくわかる本』
監修:山中寿 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長
講談社  定価1,300円(税別)



山中寿先生は、「病気に克つ第一歩は病気を理解すること」とおっしゃいます。関節リウマチという病気のメカニズムから最新治療、日常のケアまで、知りたい情報が満載の本著は、まさにリウマチ治療を行っていくうえで携えていたい1冊です。