公開:2015年2月
更新:2023年7月
公開:2015年2月
更新:2023年7月
関節リウマチは高齢者の病気と思われがちですが、実際にはどの年代にも発症する可能性があり、40歳代が発症のピークです。次いで50歳代、30歳代と続き、20歳代で発症する人も少なくありません。
男女比は1:4で女性に多く発症がみられますが、その理由はよくわかっていません。女性ホルモンの影響や、免疫の仕組みの違いなどが関係していると考えられています。
山中医師らの報告※1によると、16~74 歳までの 300 万人の診療情報データベースを用いて、抗リウマチ薬を服用している人の比率を求めたところ、日本でのリウマチの有病率は 0.6~1.0%、患者さんの数は60~100万人と推定されました。また、厚生労働省が3年に一度実施している患者調査によると、リウマチの患者さんの数は約37 万人(2017年)と推計※2されています。このように、リウマチの患者さんの数に関する調査は、さまざまな報告があります。なお、この年の患者調査からは、1993年に比べ、入院・外来ともに減少傾向にあります。 これは主に薬物を含めた治療法の向上に伴う変化と考えられています。※3
※1Yamanaka, et al. Modern Rheumatol 2014: 24(1):33- 40.
※2患者調査 平成29年患者調査 上巻(全国)上巻第62表 総患者数,性・年齢階級 × 傷病小分類別(2019年3月)
※3「厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会報告書(平成30年11月)」
関節リウマチの発症には免疫の仕組みが関係していると考えられています。免疫とは、細菌やウイルスなどの外敵から自分を守る体の仕組みです。たとえば、インフルエンザウイルスが体に入り込むと、高熱が出て関節が痛くなったり、のどが腫れて咳が出たりしますが、これらの症状は体がインフルエンザウイルスと闘っているために起こるのです。
インフルエンザウイルスのように、体の外から入ってくる外敵を「抗原」、それを攻撃して排除する物質を「抗体」といい、抗体は白血球からつくられます。抗体は外敵を見つけると、体に害を及ぼす異物と判断し、それを排除するために攻撃します。
このような免疫の仕組みで、私たちは感染症から守られていますが、何かのきっかけで、もともと自分の体に備わった細胞や物質を外敵とみなし、それを攻撃するための抗体をつくり出すことがあります。これが免疫の異常で、自分で自分の体を攻撃することから、「自己免疫疾患」と呼ばれています。
自己免疫疾患には、関節リウマチのほかに、「全身性エリテマトーデス」「強皮症」「多発性筋炎/皮膚筋炎」「糸球体腎炎」「重症筋無力症」などがあります。
●関節リウマチの痛みやこわばりの原因
「滑膜」とは、関節の内側を覆う膜です。厚さ1mmにも満たない薄い膜ですが、関節液という粘りと弾力性のある液体を分泌します。関節液は関節をスムーズに動かす潤滑液として働きます。また、関節のクッションである軟骨に、酸素や栄養を供給するのも関節液の役割です。
しかし、免疫の異常によって滑膜が攻撃されると、滑膜は炎症を起こして腫れ上がり、関節液を多量に分泌するようになります。その結果、さらに炎症が進み「ひざの腫れ」やひざに水がたまる「関節水腫」が起こります。
痛みは、痛みを起こす物質(発痛物質)が滑膜の神経を刺激するために生じます。炎症によって、サイトカインなどの発痛物質がたくさんつくられるので、痛みをとるためには炎症を抑えることが大切です。
滑膜の炎症が慢性化すると、関節の軟骨や骨にも悪影響が及び、徐々に関節が破壊されていきます。関節の破壊は、ステージ1からステージ2、ステージ3、ステージ4へと段階的に進みます (検査・診断「病期・ステージ」参照)。
リウマチの語源はギリシャ語の「rheuma(リューマ)」という言葉で、日本語に訳すと「流れ」という意味をもっており、2500年前のギリシャの医師ヒポクラテスの著書に書かれた、脳から流れ出した悪い液体が関節にたまり、痛みを引き起こす病気(rheumatismos)に由来します。
「リウマチ性疾患」とは、関節や筋肉に痛みやこわばりを来す病気全体のことを指します。
「自己免疫疾患」とは、免疫の異常で、自分の体をつくる細胞や物質を外敵と誤って認識し、攻撃してしまう病気。
「膠原病」とは、リウマチ性疾患と自己免疫疾患、そして、体の細胞と細胞の間にある組織に異常を来す「結合組織疾患」の3つが重なりあった病気のことをいいます。関節リウマチは、膠原病の1つです。
関節リウマチは進行性の病気ですが、その進み方は一様ではありません。発症してから短期間で急に病状が進んでしまう人がいる一方、自然に治まっていく(自然寛解)人も少数ながらいます。いちばん多いのは、症状がよくなったりわるくなったりしながら、10年、20年かけて進む人ですが、この場合も、同じペースで進行するのではなく、急に悪化のスピードがはやくなることもあります。
関節の炎症と比例して関節が傷つき始め、関節リウマチの発症から1~2年すると関節に破壊が生じます。関節の破壊が進む前にできるだけ早く治療を始めることが大切です。早期に適切な治療を始めることによって、関節の破壊を防ぐことができ、より多くの人が寛解の状態を維持できるようになります。ある程度進行した場合も、治療を続けていけば生活の質をよりよい状態に保つことができます。
かつての関節リウマチの治療は、痛みのコントロールが中心で、薬による除痛効果がない場合には別の薬を追加していくことが一般的でした。
しかし、1980年代後半から1990年代の研究の成果と、有効な抗リウマチ薬やバイオ医薬品が登場したことにより、早期からこれらの薬を積極的に使う治療へと大きく変わりました。
30~50歳代で発症することの多い関節リウマチですが、10歳代や、60歳以降で発症することもあります。
16歳未満で発症する場合を「若年性特発性関節炎(JIA)」といいます。若年性特発性関節炎は、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患の1つです。18歳未満の患者さんと、引き続き治療が必要と認められる20歳未満の患者さんで、小児慢性特定疾患治療研究事業の定めた要件を満たしていれば、医療費の助成が受けられます。申請方法については医師や病院の事務、患者相談窓口、最寄りの保健所などへ問い合わせましょう。
また、関節リウマチのなかでも、血管炎や間質性肺炎など関節以外の症状がとくに重いタイプを「悪性関節リウマチ」といい、呼吸不全や感染症、心不全、腎不全などが原因で死に至ることもあります。悪性関節リウマチは、必ずしも重症の関節リウマチを意味するものではありません。
悪性関節リウマチは、難病医療費助成制度の対象疾患となっており、申請し認定されれば、医療費の補助を受けることができます。
関節リウマチの主症状に関節のこわばりや痛みがありますが、これらの症状は別の病気でもあらわれることがあります。症状が似ていても、病気によって治療法はそれぞれ異なるので、適切な治療のためには専門医を受診して本当に関節リウマチなのかどうか、しっかり見極めること(鑑別)が大切です。
とくに、リウマチ性疾患は、症状が似ているため、関節リウマチかどうかを見極めることが必要です。ほかに細菌感染に伴う関節炎や痛風、加齢に伴う変形性関節症や更年期障害などでも関節の痛みやこわばりが出現します。
●関節リウマチに似た症状があらわれる病気
関節リウマチとの見極めが難しい病気には、ウイルス感染による関節炎や、膠原病、類縁疾患であるシェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、皮膚筋炎、リウマチ性多発筋痛症などがあります。そのほか、加齢や関節への過度な負担によって、関節の軟骨がすり減り、こわばりや痛みが生じる変形性関節症や腱鞘炎、痛風、ベーチェット病などとの鑑別もしっかりする必要があります。また、病気ではありませんが、更年期障害でも関節の痛みが生じることがあります。
その他、関節の症状を有する疾患は多く、関節リウマチと間違えられやすいことがあります。正しい治療は正しい診断から始まります。疑問があれば、専門の先生方に意見を聞くのもよい方法だと思われます。
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