お薬による治療

関節リウマチの治療の根幹は薬物療法

関節リウマチの治療には、原因に働きかける薬と症状を抑える薬を使います。
原因に働きかける薬は、過剰な免疫の働きを抑えることによって関節の破壊を食い止めます。症状を抑える薬は、炎症を抑え、腫れや痛みを和らげます。
それぞれにいくつかの種類があり、患者さんの状態により使い分けます。

関節リウマチは、発症したら関節の破壊が進むので、できるだけ早期に抗リウマチ薬やバイオ医薬品を使い、病気の進行を押さえ込むことが世界的な標準治療になっています。
ただし、関節リウマチは症状や進み方が患者さんごとに異なるため、病気の状態以外にも、年齢や生活背景などにも配慮しながら治療を進めていく必要があります。

関節リウマチの原因に働きかける薬

原因に働きかける薬には、「抗リウマチ薬」と「バイオ医薬品」があります。
抗リウマチ薬は、正しくは疾患修飾性抗リウマチ薬といい、DMARDs(ディーマーズ)とも呼ばれます。関節リウマチを引き起こしている免疫の異常にさまざまな角度から作用し、病気の活動性を抑え、関節の破壊を抑止します。

バイオ医薬品 は、バイオ技術を応用して、細胞などを使ってつくられた新しい薬です。非常に活動性の高い関節リウマチの症状を改善し、関節破壊を防ぎます。いったん壊れた骨の修復も期待できます。

リウマチの薬の作用・特徴・副作用、メトトレキサート、リウマトレックス

※細胞が分裂するときに重要な役割を果たす物質である葉酸の産生を抑え、滑膜で活発になっているT細胞や滑膜細胞の増殖を抑える


免疫抑制剤には、ほかにレフルノミド、ミゾリビン、シクロスポリン、タクロリムスなどがあります。

抗リウマチ薬の「エスケープ現象」とは

抗リウマチ薬がよく効いていた人でも、服用を始めてから2~3年たつと、効果が薄れて再び病気の活動性が高まることがあります。それを「エスケープ現象」といいます。
エスケープ現象が起こった場合は、別の抗リウマチ薬あるいはバイオ医薬品を追加して併用することもありますが、これまでの薬をやめ、別の薬に切り替えることもあります。

症状を抑える薬

症状を抑える薬には、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs(エヌセイド))」と「ステロイド薬」という2種類のタイプがあります。炎症を抑え、腫れや痛みを和らげます。

リウマチ薬の作用・特徴・副作用、ステロイド、NSAIDs
ステロイドの副作用

バイオ医薬品によって変わった関節リウマチの治療

バイオ医薬品は、関節リウマチを引き起こす物質や細胞の分子に狙いを絞り、その活動を抑え込むようにつくられた薬です。ターゲットとなるのは、炎症を引き起こす「炎症性サイトカイン」、あるいは免疫にかかわる「T細胞」の表面にあるたんぱく質です。

バイオ医薬品の登場で、関節リウマチの治療は劇的に変わりました。寛解を目標とし、その達成に向けた治療「T2T」が可能となりました。

炎症や免疫の異常を分子レベルで抑え込む

関節破壊の原因となる炎症や免疫の異常には、分子レベルの物質が深くかかわっています。炎症は、炎症性サイトカインのなかでも、「TNF(腫瘍壊死因子)」「インターロイキン-1」「インターロイキン-6」が異常に増え、関節を攻撃することで起こります。その影響でT細胞が活性化し、滑膜が増殖します。
バイオ医薬品は、これらのうち1つに作用して炎症を抑え、関節破壊を食い止めます。

たとえば、リウマチの治療薬として国内で最初に承認されたバイオ医薬品「インフリキシマブ」は、TNF-αという分子に作用します。TNF-αは関節の炎症を進行させる働きがありますが、インフリキシマブを投与することで、その働きを抑え、炎症を治めることが期待できます。

TNF-αの働きを抑えるインフリキシマブ
バイオ医薬品の投与方法・スケジュール


使用中は感染症に対する注意が必要

化学的に合成された薬と違い、バイオ医薬品は細胞の中には取り込まれませんので、細胞を傷害するなどの作用がなく、体への負担が少ないとされています。しかしまったく副作用がないわけではありません。
バイオ医薬品のターゲットとなる炎症性サイトカインやT細胞には、体を感染症から守る働きがありますが、バイオ医薬品はその働きを抑えるため、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなることがあります。
また、注射や点滴をした箇所に、痛みや腫れ、かゆみ、出血などがあらわれることがあります。

バイオ医薬品の副作用

副作用は早期に発見すれば、軽度のうちに対処することができます。医師や薬剤師から注射や点滴前後の注意点や、気をつける症状などについて十分説明を受け、異常を感じたらすぐに相談しましょう。
副作用対策には、患者さんと医療者の協力が最も重要です。

体調の変化を見逃さないための「治療の記録」

副作用の早期発見や体調管理のために、「治療の記録」をつけるとよいでしょう。また、日頃気になっていることや、次回の診察時に医師に聞きたいことなどを書き留めておくと、質問や相談がスムースにでき、診察の時間を有意義に使うことができます。
「治療の記録」は好きなノートを使ってもよいですし、関節リウマチの患者さん用の手帳やノートを置いてある施設もありますので、医師や看護師に尋ねてみましょう。「治療の記録」は、関節リウマチの「基礎療法」としても大切です。

バイオ医薬品の新たな選択肢 バイオシミラー(BS)

新薬の特許が切れてから別の会社で製造販売される医薬品を後発薬といいます。そのなかで、バイオ医薬品の後発薬をバイオシミラー(バイオ後続品)、それ以外の後発薬をジェネリック医薬品(後発医薬品)といいます。
バイオ医薬品は治療効果の高いお薬です。とても魅力的ですが、医療費が高くなってしまうのも事実です。
経済性に目を向けたとき、バイオシミラーは選択肢のひとつになります。

バイオ医薬品とは

科学技術の発展で、医薬品の開発は大きく進歩しました。とくにバイオ医薬品と呼ばれるお薬の登場は、これまで治療が困難だったさまざまな病気の治療法を大きく変えました。関節リウマチの治療もバイオ医薬品の登場で飛躍的に進歩しました。
バイオ医薬品は高度なバイオ技術を応用して細胞などを使って、製造されます。その製造には、高い技術力と最新の専用設備が必要となります。そのため、通常の薬剤よりも開発や製造にコストがかかり、医療費が高額になってしまいます。

バイオシミラーとは

「バイオシミラー」は、すでに発売されているバイオ医薬品(先行品)の特許が切れたあとに、開発・発売するお薬と冒頭で説明しましたが、バイオシミラーの価格は、同じ成分のバイオ医薬品(先行品)の価格の原則70%で算定されるというルールがあります。先行品に比べ、薬の価格が低く抑えられているという点では、ジェネリック医薬品と同じです。

後発薬


ただし、バイオシミラーとジェネリック医薬品には異なる点があります。

ジェネリック医薬品は、先行品と同じ成分で作られているため、先行品と同じ効果があるだろうという仮定のもと、臨床試験は行っていません。
一方、バイオシミラーは、高度なバイオ技術を用いるので、製造工程が多くとても複雑です。そのため、発売前に、効果と安全性が先行品と同じであることを証明するために、実際の患者さんを対象とした臨床試験を行います。そして、効果と安全性が先行品と同じであると認められたものが、薬として使われているのです。

バイオシミラー
効果と安全性が先行品※と同じ
※新薬として発売されたバイオ医薬品を先行バイオ医薬品、略して先行品といいます。



関節リウマチの治療に、バイオシミラーを使う場合には、最初からバイオシミラーを使う場合と、すでに同じ成分の先行品を使っている人が、途中から切り替える場合とがあります。

経済性という視点からバイオシミラーを考える

すでに述べていますが、バイオシミラーの価格は先行品の70%ほどに抑えられています。
バイオ医薬品の治療効果は十分期待できるものの、医療費が高額になるため、バイオ医薬品を使用することに悩む方もいるかもしれません。経済性を考えた際、バイオシミラーは治療の選択肢のひとつとなることでしょう。

国民医療費が年々増加する日本の課題

日本の国民医療費は年々増加し、平成27年度の医療費は、41.5兆円となり、40兆円を超えた前年度に比べて、さらに1.5兆円の増加となっています。国民一人あたりに換算すると、年間でおよそ32.7万円の医療費が支払われています。こちらも対前年度3.8万円の増加になっています。
少子高齢化の日本では、今後ますます医療保険財政がひっ迫することが想像に難くありません。厚生労働省では医療保険財政の改善のために、後発薬の普及を推進しています。
バイオシミラーもまた、患者さんの医療費負担を軽減するとともに、国民医療費の削減にも貢献できるのではないかと考えられています。

国民医療費が年々増加する日本の課題
厚生労働省ホームページ「平成27年度 国民医療費の概況」より作成