公開:2015年2月

更新:2023年7月

リウマチの治療

関節リウマチの治療方法につ
いてお薬・リハビリ・手術の
それぞれの観点から解説します。

公開:2015年2月

更新:2023年7月

お薬による治療

関節リウマチの治療の根幹は薬物療法

関節リウマチの治療薬には、原因に働きかける薬と症状を抑える薬があります。
原因に働きかける薬は、過剰な免疫の働きを抑えることによって関節の破壊を食い止めます。症状を抑える薬は、炎症を抑え、腫れや痛みを和らげます。
どちらのタイプの薬にも、それぞれいくつかの種類があり、患者さんの状態により使い分けます。

関節リウマチは、発症後、徐々に関節の破壊が進むので、できるだけ早期に免疫抑制剤やバイオ医薬品などを使い、病気の進行を押さえ込むことが世界的な標準治療になっています。
ただし、関節リウマチは症状や進み方が患者さんごとに異なるため、病気の状態以外にも、年齢や生活背景などにも配慮しながら治療を進めていく必要があります。

関節リウマチの原因に働きかける薬

原因に働きかける薬には、「抗リウマチ薬」があります。


抗リウマチ薬は、正しくは疾患修飾性抗リウマチ薬といい、DMARDs(ディーマーズ)とも呼ばれます。
DMARDsには従来型合成抗リウマチ薬(csDMARDs)、生物学的抗リウマチ薬(bDMARDs)、分子標的合成抗リウマチ薬(tsDMARDs)があります。
関節リウマチを引き起こしている免疫の異常にさまざまな角度から作用し、病気の活動性を抑え、関節の破壊を抑止します。
生物学的抗リウマチ薬は、バイオ技術を応用して、細胞などを使ってつくられた比較的新しい薬です。
分子標的合成抗リウマチ薬(tsDMARDs)は、全く新しいタイプの関節リウマチ治療薬で、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬と呼ばれる経口の薬です。
「リウマチ情報センター 治療(薬物療法)5.JAK阻害薬より引用改変」

※細胞が分裂するときに重要な役割を果たす物質である葉酸の産生を抑え、滑膜で活発になっているT細胞や滑膜細胞の増殖を抑える

●抗リウマチ薬の「エスケープ現象」とは

抗リウマチ薬がよく効いていた人でも、服用を始めてから2~3年たつと、効果が薄れて再び病気の活動性が高まることがあります。それを「エスケープ現象」といいます。
エスケープ現象が起こった場合は、別の抗リウマチ薬あるいはバイオ医薬品を追加して併用するか、これまでの薬をやめ、別の薬に切り替えます。

症状を抑える薬

症状を抑える薬には、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs(エヌセイズ))」と「ステロイド薬」という2種類のタイプがあります。炎症を抑え、腫れや痛みを和らげます。

バイオ医薬品とJAK阻害薬のはたらき

バイオ医薬品は、関節リウマチを引き起こす物質や細胞の分子に狙いを絞り、その活動を抑え込むようにつくられた薬です。ターゲットとなるのは、炎症を引き起こす「炎症性サイトカイン」、あるいは免疫にかかわる「T細胞」の表面にあるたんぱく質です。また、JAK阻害薬は細胞の中で作用し、炎症性サイトカインを遮断します。

バイオ医薬品やJAK阻害薬の登場で、関節リウマチという病気は寛解を目標とし、その達成に向けた治療「T2T」が可能となりました。

炎症や免疫の異常を分子レベルで抑え込む

関節破壊の原因となる炎症や免疫の異常には、分子レベルの物質が深くかかわっています。
バイオ医薬品はT細胞の活性化を抑えることや、炎症性サイトカインである「TNF(腫瘍壊死因子)」「インターロイキン-6」の働きを直接抑えることにより、関節破壊を食い止める効果が期待できます。
また、JAK阻害剤は炎症性サイトカインの伝達に必要なJAKという細胞内の酵素を阻害することにより、炎症を抑え、関節破壊を食い止める効果が期待できます。

使用中は感染症に対する注意が必要

バイオ医薬品のターゲットとなる炎症性サイトカインやT細胞には、体を感染症などから守る働きがありますが、バイオ医薬品はその働きを抑えるため免疫力が低下して、風邪やインフルエンザ、結核などの感染症にかかりやすくなることがあります。
また、注射や点滴をした箇所に、痛みや腫れ、かゆみ、出血などがあらわれることがあります。ほかにも重篤な副作用として、間質性肺炎や肝機能障害、骨髄障害が起こることがあります。薬剤によっては、心不全の報告もあり、うっ血性心不全の患者さんでは使用できないものもあります。

また、炎症性サイトカインの活性化に関与するJAKという酵素に働きかけるJAK阻害剤もバイオ医薬品と同様に、感染症、肝機能障害、骨髄障害などの副作用への十分な注意が必要です。薬を使用する前に結核やB型肝炎などの感染の有無を確認します。

副作用は早期に発見すれば、軽度のうちに対処することができます。医師や薬剤師から使用する薬剤の注意点や、気をつける症状などについて十分説明を受け、異常を感じたらすぐに相談しましょう。
副作用対策には、患者さんと医療者の協力が最も重要です。

●体調の変化を見逃さないための「治療の記録」

副作用の早期発見や体調管理のために、「治療の記録」をつけるとよいでしょう。また、日頃気になっていることや、次回の診察時に医師に聞きたいことなどを書き留めておくと、質問や相談がスムースにでき、診察の時間を有意義に使うことができます。
「治療の記録」は好きなノートを使ってもよいですし、関節リウマチの患者さん用の手帳やノートを置いてある施設もありますので、医師や看護師に尋ねてみましょう。「治療の記録」は、関節リウマチの「基礎療法」としても大切です。

バイオ医薬品の後続品
バイオシミラー(BS)

新薬の特許が切れてから別の会社で製造販売される医薬品を後発薬といいます。そのなかで、バイオ医薬品の後発薬をバイオシミラー(バイオ後続品)、それ以外の後発薬をジェネリック医薬品(後発医薬品)といいます。
バイオ医薬品は治療効果の高い薬ですが、医療費が高額になってしまうのも事実です。
経済性に目を向けたとき、バイオシミラーは選択肢のひとつになります。

「バイオシミラー」は、すでに発売されているバイオ医薬品(先行品)※の特許が切れたあとに発売するお薬と冒頭で説明しましたが、バイオシミラーの価格は、同じ成分のバイオ医薬品(先行品)の価格の原則70%で算定されるというルールがあります。先行品に比べ、薬の価格が低く抑えられているという点では、ジェネリック医薬品と同じです。

※新薬として発売されたバイオ医薬品を先行バイオ医薬品、略して先行品といいます。

ただし、バイオシミラーとジェネリック医薬品には異なる点があります。

ジェネリック医薬品は、先行品と同じ有効成分で作られているため、先行品と同じ効果があるだろうという仮定のもと、生物学的同等試験を行い、安全性と有効性を確認しています。
一方、バイオ医薬品は、高度なバイオ技術を用いるので、製造工程が多くとても複雑です。そのため、バイオシミラーは、発売前に、安全性と有効性及び品質が先行品と同等/同質であることを確認するために、実際の患者さんを対象とした臨床試験を行います。そして、安全性と有効性及び品質が先行品と同等/同質であると認められたものが、薬として使われているのです。

関節リウマチの治療に、バイオシミラーを使う場合には、最初からバイオシミラーを使う場合と、すでに同等/同質の先行品を使っている人が、途中から切り替える場合とがあります。

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