公開:2015年2月

更新:2023年7月

リウマチの治療

関節リウマチの治療方法につ
いてお薬・リハビリ・手術の
それぞれの観点から解説します。

公開:2015年2月

更新:2023年7月

治療の基本

関節リウマチ治療の4本柱

関節リウマチの治療は、「基礎療法」「薬物療法」「手術療法」「リハビリテーション療法」の4つを組み合わせることが基本となります。
薬物療法を中心に、関節の機能を維持するためのリハビリテーション療法、関節の機能を回復させるための手術療法を、症状や病気の進行度に合わせて行いますが、治療の効果をあげるためには、患者さん自身が日々、生活の管理をする基礎療法が不可欠です。

関節リウマチの治療は、患者さんと医師、看護師、理学療法士、薬剤師などの医療者が、手を携えて取り組みます。

関節リウマチの治療目標

関節リウマチの治療目標は「寛解」です。寛解とは、関節リウマチの症状がコントロールされ、症状がほぼ消えている状態のことをいいます。
炎症反応がなくなり、患者さん本人が感じる症状(自覚症状)がなく、診察によって把握される症状(他覚症状)も無い状態を臨床的寛解といいます。関節破壊の進行が抑えられている状態を構造的寛解、関節をはじめとして身体の機能が維持できている状態を機能的寛解といいます。これら3つを達成したときに、寛解と判断されます。そして、この寛解の状態を長く継続することが目標となります。

寛解の基準として、2011年に米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会とが共同で、T2T (Treat to Target)で目標にすべき寛解の基準を次のように定めました。

T2T (Treat to Target)とは、目標達成に向かって治療を行うという意味で、寛解を目標にした関節リウマチ治療のスローガンとなっています。

現在では、抗リウマチ薬や、バイオ医薬品の登場によって、痛みをとり去るだけではなく、病気の進行を抑えることが望めるようになりました。症状に悩まされずに日常生活を送ることができる「寛解」を維持することができるようになってきています。

●T2Tという考え方

T2Tという考え方は、2010年に欧州リウマチ学会を中心にまとめられたものです。その後、薬物治療がさらに進歩したことを受け、 2014年にはリコメンデーション(治療推奨)がアップデートされました。リコメンデーションは、4つの基本的な考え方と、10のステートメント(声明)で成り立っています。 1) 2) 3)

基本的な考え方
(A)
関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである
(B)
関節リウマチの主要な治療ゴールは、症状のコントロール、関節破壊などの構造的変化の抑制、身体機能の正常化、社会的・労働的活動への参加を通じて、患者の長期的なQOLを最大限まで改善することである
(C)
炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するためにもっとも重要である
(D)
疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化による「目標達成に向けた治療(Treat to Target)」は、関節リウマチのアウトカム改善に最も効果的である治療ゴールを達成するためにもっとも重要である
ステートメント
1.
関節リウマチ治療の目標は、まず臨床的寛解を達成することである
2.
臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状・徴候が消失した状態と定義する
3.
寛解を明確な治療目標とすべきであるが、利用可能なエビデンスに基づくと、とりわけ長期罹病患者は、疾患活動性が低いことが当面の目標となりうる
4.
日常診療における治療方針の決定には、関節所見を含む総合的疾患活動性指標を用いて評価する必要がある
5.
疾患活動性指標の選択や治療目標値の設定には、合併症、患者要因薬剤関連リスクなどの影響を受ける
6.
治療目標が達成されるまで、薬物療法は少なくとも3カ月ごとに見直すべきである
7.
疾患活動性の評価は、中~高疾患活動性の患者では毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者では6カ月ごとに、定期的に実施し記録しなければならない
8.
治療目標が達成されるまで、薬物療法は少なくとも3カ月ごとに見直すべきである
9.
設定した治療目標は、疾病の全経過を通じて維持すべきである
10.
リウマチ医は、治療目標について、「目標達成に向けた治療(Treat to Target)」について患者に適切に説明をし、患者関与させるべきである

1)Smolen JS, et al. Treating rheumatoid arthritis to target : recommendation of an international task force. Ann Rheum Dis.2010.69:631-637
2)竹内勤.治療戦略の進歩 Treat to Target. 治療学 44(10)別刷:21-25,2010.
3)Smolen JS, Breedveld FC, Burmester GR, et alTreating rheumatoid arthritis to target: 2014 update of the recommendations of an international task forceAnnals of the Rheumatic Diseases 2016;75:3-15.

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